水の利用と洪水対策
水の工学では、2つの仕事がセットになっています。
- 水の利用:川、湖、井戸、貯水池から水をとり、作物、家畜、家、工場で使うこと。
- 洪水対策:あふれた水が人や家や農地に被害を出さないようにすること。
ダムの後ろにある貯水池は、この両方をこなします。雨の多い季節には余った雨水をためるので、下流の川の水位が低くすみます。乾季には水を流して農地に届けます。水田や池も同じ働きをします。雨を一度に流さず、土地の上にとどめておくからです。
洪水を防ぐ方法は、水をためる(ダム、池、田んぼ)、川が安全に広がれるようにする(遊水地)、水の逃げ道をつくる(排水路、堤防)の3つです。
かんがいと排水
かんがいとは、雨だけでは足りない水を作物に与えることです。主な方法は次のとおりです。
- 地表かんがい(湛水・うね間):水を畑全体やうねの間に流します。かんたんですが、むだになる水が多いです。
- スプリンクラー:パイプから雨のように水をまきます。
- 点滴かんがい:細いパイプで根もとに1滴ずつ水を与えます。いちばん水を節約できます。
排水とは、余った水を外へ出すことです。次の理由で必要になります。
- 水が多すぎると根が呼吸する空気がなくなる(湛水害)。
- 地面がかたくなり、トラクターや収穫機が動ける。
- 乾燥地では、土にたまった塩分を洗い流せる。
地表排水は開いた溝です。地下排水(暗渠)は、穴のあいたパイプを土の中に埋めて、土の水を集めます。よい農場では、かんがいと排水をいっしょに計画します。
かんがい施設
水はいくつもの施設をつないで流れます。3Dを左から右へたどってみましょう。
- ダムと貯水池:川の水をためます。
- 堰(取水施設):低い壁や門で川の水位を上げ、水の一部を水路へ送ります。
- 本水路と支線水路:水を土地じゅうに運び、分かれるほど細くなります。
- パイプラインとポンプ:重力だけでは水が届かない所へ、持ち上げたり押したりして送ります。
- 水門とゲート:どこへどれだけ水を流すかを調節できる戸です。
- ため池・タンク:田畑の近くにある小さな水がめです。
- 排水路:余った水を川へ戻します。
水路はおもに重力で流れるので、ゆるやかに下っています。これらの施設は手入れが大切です。土砂、雑草、ひび割れで流れが悪くなるため、農家や地域の人たちが毎年そうじと修理をします。
農業用水の多面的な働き
農業に使う水は、作物を育てる以外にも役に立ちます。これを多面的機能といいます。
- 洪水を和らげる:あぜで囲まれた水田は雨水をためます。
- 地下水を増やす:田んぼの水の一部は地中にしみこみ、井戸の水になります。
- 空気を冷やす:田んぼや植物から水が蒸発すると、暑い日に近くの空気が涼しくなります。
- 生き物のすみか:池、水路、湿った田んぼは、カエル、魚、昆虫、鳥のすみかになります。
- 景観と文化:緑の棚田や水路は心地よい風景をつくり、村の伝統を守ります。
農地が使われなくなったり、舗装されたりすると、こうした無料の働きもなくなってしまいます。だから農地と水路を大切に守ることが必要なのです。
やってみよう:水の道すじをたどる
近くの水路、池、溝を見に行くか、地図や写真を見てみましょう。水源から田畑まで、そして田畑から川へ戻るまでの道すじを描き、見つかった水門、ポンプ、排水路に印をつけます。それから農家の人やお年寄りに聞いてみましょう。「水門はいつ開けて、いつ閉めるのですか?」
重要な公式と用語
- 水の体積(m³)= 深さ(m)× 面積(m²)
- 1 ha に 1 mm = 10 m³
- 水路の流量 Q(m³/s)= 断面積(m²)× 速さ(m/s)
- 体積 = 流量 × 時間
- 節約率(%)=(これまでの使用量 − 新しい使用量)÷ これまでの使用量 × 100
- 重要語:かんがい、排水、貯水池、堰、水路、水門、湛水害
例題
1. 2 ヘクタールの水田に 60 mm の水が必要です。何 m³ でしょう?(1 ha = 10,000 m²)
面積 = 20,000 m²。深さ = 0.06 m。体積 = 20,000 × 0.06 = 1,200 m³。
2. 水路が毎秒 0.5 m³ の水を運んでいます。1 時間ではどれだけ流れますか?
1 時間 = 3,600 秒。体積 = 0.5 × 3,600 = 1,800 m³。
3. 幅 2 m、水深 1 m の水路を、水が 0.5 m/s で流れています。流量 Q を求めましょう。
断面積 = 2 × 1 = 2 m²。Q = 2 × 0.5 = 1 m³/s。
4. 100 ha の水田のあぜが、雨水をさらに 10 cm ためます。洪水の水はどれだけ貯まりますか?(1 ha = 10,000 m²)
面積 = 1,000,000 m²。深さ = 0.1 m。体積 = 100,000 m³。
5. 田んぼに余分な水が 80 mm あります。排水路は 1 時間に 20 mm ずつ水を抜きます。全部抜くのに何時間かかりますか?
80 ÷ 20 = 4 時間。
6. 湛水かんがいは作物に 900 mm の水を使い、点滴かんがいは 600 mm です。点滴は水を何パーセント節約できますか?
節約率 = (900 − 600)÷ 900 × 100 = 33.3%、約 3 分の 1。
よくある間違い
- 排水は雨の多い所だけに必要だと思うこと。かんがいしている畑でも、湛水害や塩分のたまりを防ぐために排水が必要なことが多いです。
- かんがい(水を入れる)と排水(水を出す)を取り違えること。
- ダムは水を供給するだけだと思うこと。洪水の水もためてくれます。
- 1 ヘクタールが 10,000 m² であることを忘れ、体積の答えが 10 倍ずれてしまうこと。