無機化合物の4つのグループ
酸化物は、ある元素と酸素の化合物です。たとえば CaO や CO₂ です。金属の酸化物はふつう塩基性、非金属の酸化物はふつう酸性です。Al₂O₃ や ZnO のように、酸とも塩基とも反応する両性の酸化物もあります。
酸は水の中で H⁺ イオンを出すものです(HCl、H₂SO₄、HNO₃)。塩基は OH⁻ イオンを出すか、H⁺ を受け取るものです(NaOH、Ca(OH)₂、NH₃)。水に溶ける塩基をアルカリといいます。塩は、金属(または NH₄⁺)のイオンと、酸の残りのイオンからできています(NaCl、CuSO₄、NH₄NO₃)。
知っておきたい酸と塩基の考え方
- アレニウス: 酸は水の中で H⁺ を出し、塩基は OH⁻ を出す。
- ブレンステッド・ローリー: 酸は陽子(H⁺)を与え、塩基は陽子を受け取る。NH₃ は H⁺ を受け取るので塩基です。
- ルイス: 酸は電子対を受け取り、塩基は電子対を与える。
酸・塩基・塩の名前のつけ方
- 酸素を含まない酸(二元酸): 英語では hydro- + 語幹 + -ic です。HCl は hydrochloric acid(塩酸)、HBr は hydrobromic acid(臭化水素酸)。
- 酸素を含む酸(オキソ酸): 酸素が多いほうが -ic、少ないほうが -ous です。H₂SO₄ は sulfuric(硫酸)、H₂SO₃ は sulfurous(亜硫酸)。HNO₃ は nitric(硝酸)、HNO₂ は nitrous(亜硝酸)。
- 塩基: 金属 + 水酸化物。NaOH は水酸化ナトリウム、Fe(OH)₃ は水酸化鉄(III)(ローマ数字は金属の価数を表す)。
- 塩: 金属の名前が先で、そのあとに酸の語尾が変わります。-ic → -ate(〜酸塩)、-ous → -ite(〜亜酸塩)、hydro-…-ic → -ide(〜化物)。つまり H₂SO₄ からは硫酸塩、H₂SO₃ からは亜硫酸塩、HCl からは塩化物ができます。
- まだ H が残っている塩を酸性塩といいます。NaHCO₃ は炭酸水素ナトリウム。まだ OH が残っている塩を塩基性塩といいます。Mg(OH)Cl がその例です。
グループどうしのつながり
1つの元素をたどると、家系図のようにグループをまたいでつながっています。
金属: Ca → CaO → Ca(OH)₂ → CaCO₃ (2Ca + O₂ → 2CaO; CaO + H₂O → Ca(OH)₂; Ca(OH)₂ + CO₂ → CaCO₃ + H₂O)
非金属: S → SO₂ → H₂SO₃ → Na₂SO₃
2本の流れは塩で出会います。塩のでき方はたくさんあります。酸 + 塩基、酸 + 金属、酸 + 塩基性酸化物、塩基 + 酸性酸化物、酸 + 炭酸塩などです。
滴定とは
滴定は、濃度が分かっている溶液(標準溶液、滴定液ともいう)と反応させて、濃度が分からない溶液の濃度を求める方法です。
- 濃度が分からない酸を、ホールピペットで正確な体積(たとえば25.0 mL)とって三角フラスコに入れ、指示薬を2〜3滴加えます。
- ビュレットに標準溶液の塩基を入れます。目の高さで、メニスカスの底の目盛りを読んで、最初の体積とします。
- フラスコを振り混ぜながら塩基を加えます。終わりに近づいたら1滴ずつ加えます。
- 色が消えずに変わった最初のところで止めます。ここが滴定終点です。最後の目盛りを記録します。2回の結果が0.10 mL以内で一致する(そろう)まで繰り返します。
当量点とは、反応式のとおりに酸と塩基のモル数がちょうど合うところです。滴定終点とは、指示薬の色が変わるところです。よい指示薬を選べば、この2つはほぼ同じになります。
滴定曲線と指示薬の選び方
加えた塩基の体積に対して pH をグラフにすると、S字の滴定曲線になります。
- 強酸 + 強塩基(HCl + NaOH): pH は1付近から始まり、約3から11まで急に上がります。当量点は pH 7。フェノールフタレインでもメチルオレンジでも使えます。
- 弱酸 + 強塩基(CH₃COOH + NaOH): pH 3付近から始まり、途中に平らな緩衝領域があり、当量点は7より大きく(約8.7)なります。フェノールフタレイン(変色域 8.2〜10)を使います。半当量点では pH = pKa です。
- 強酸 + 弱塩基(HCl + NH₃): 当量点は7より小さく(約5)なります。メチルオレンジ(変色域 3.1〜4.4)を使います。
- 弱酸 + 弱塩基: はっきりした急上昇がないので、よく合う指示薬がありません。pH メーターを使います。
ルール: 変色域が曲線の急なところの中に入る指示薬を選びます。
滴定の計算
モル数 = 濃度(mol/L) × 体積(L)。つり合った反応式の比を使います。
HCl + NaOH(1 : 1)の場合: CaVa = CbVb。
H₂SO₄ + 2NaOH の場合: NaOH のモル数 = H₂SO₄ のモル数の2倍なので、2CaVa = CbVb。
当量点の前(強酸): [H⁺] = (残った酸のモル数) ÷ (全体の体積)。当量点の後: [OH⁻] = (余った塩基のモル数) ÷ (全体の体積)、そして pH = 14 − pOH(25 °C)。
重要な公式と用語
- n = C × V (V は L)
- 1 : 1 の反応: C₁V₁ = C₂V₂
- a·CₐVₐ = b·C_bV_b (a, b = 酸・塩基が出す H⁺ / OH⁻ の数)
- pH = −log[H⁺]; pH + pOH = 14 (25 °C)
- 弱酸の半当量点: pH = pKa
例題
1. 名前を答えよう: (a) HNO₂ (b) K₂SO₄ (c) Fe(OH)₂ (d) NaHCO₃。
(a) 亜硝酸 (nitrous acid、酸素が少ないので -ous)。(b) 硫酸カリウム (硫酸 sulfuric → sulfate)。(c) 水酸化鉄(II)。(d) 炭酸水素ナトリウム、酸性塩。
2. マグネシウムから塩化マグネシウムまでのつながりを書こう。
2Mg + O₂ → 2MgO; MgO + H₂O → Mg(OH)₂; Mg(OH)₂ + 2HCl → MgCl₂ + 2H₂O。
3. 25.0 mLのHClを中和するのに、0.100 MのNaOHが20.0 mL必要でした。[HCl]を求めよう。
n(NaOH) = 0.100 × 0.0200 = 0.00200 mol = n(HCl)。C = 0.00200 ÷ 0.0250 = 0.0800 M。
4. 20.0 mLのH₂SO₄を、0.250 MのNaOH 32.0 mLで中和しました。[H₂SO₄]を求めよう。
n(NaOH) = 0.250 × 0.0320 = 0.00800 mol。H₂SO₄ : NaOH = 1 : 2 なので、n(H₂SO₄) = 0.00400 mol。C = 0.00400 ÷ 0.0200 = 0.200 M。
5. 0.100 MのHCl 25.0 mLに、0.100 MのNaOHを20.0 mL加えたあとの pH を求めよう。
酸は 0.00250 mol、塩基は 0.00200 mol。残った H⁺ = 0.000500 mol が 45.0 mL の中にある。[H⁺] = 0.000500 ÷ 0.0450 = 0.0111 M。pH = 1.95。
6. 同じフラスコに、NaOHを30.0 mL加えたあとの pH を求めよう。
塩基は 0.00300 mol、余った OH⁻ = 0.000500 mol が 55.0 mL の中にある。[OH⁻] = 0.00909 M、pOH = 2.04、pH = 11.96。たった10 mLの間に pH が約2から12へ跳ね上がりました。これが曲線の急なところです。
よくある間違い
- モル数を求める前に mL を L に直し忘れる。
- H₂SO₄ + NaOH に C₁V₁ = C₂V₂ を使ってしまう。1 : 2 の比を使わなければいけません。
- 当量点がいつも pH 7 だと思い込む。7になるのは強酸 + 強塩基のときだけです。
- ビュレットの目盛りをメニスカスの線より上や下から読む(視差の誤差)。または、最初にビュレットを滴定液で洗っていない。